中央集権から地方自治へ local governing 2003 6 9
政治の世界では、中央集権から、地方分権への議論があります。
しかし、コンピューターの世界では、地方分権が確立しつつあります。
昔のコンピューターシステムは、大きな汎用コンピューターの下に、
無数の端末コンピューターが、ぶら下がっている形でした。
典型的な中央集権の形です。
さらに時代が下ると、パソコンが登場しました。
これで、昔は汎用コンピューターしか存在しなかった世界から、
個人もコンピューターを所有することができるようになりました。
汎用コンピューターとパーソナルコンピューターの関係は、
王様と地方豪族の関係でしょうか。
王様と地方豪族の力の差は、圧倒的でした。
しかし、地方に豪族が力を持ち始めたことは事実です。
この時代には、コンピューターネットワークも少しずつ発達してきました。
パソコン同士を電話回線で結び、ネットワークを構築するものです。
しかし、パソコン同士を直接結んで、
ネットワークを構築することはできませんでした。
パソコン同士が通信するのに、汎用コンピューターが仲介したのです。
汎用コンピューターが中心となって、ネットワークが構築されたのです。
しかし、王様がネットワークの中心になっているとは言え、
地方の豪族同士が連絡を取り始めたことは事実です。
これは当時、パソコン通信と呼ばれました。
日本では、Nifty-serveという巨大なパソコン通信がありました。
地方の豪族同士の巨大なネットワークでした。
アメリカでは、AOLでしょうか。
パソコン通信は、巨大な恐竜のように育ちました。
そこで、その巨大な恐竜を手に入れようとした者もいました。
しかし、この巨大な恐竜同士を通信回線でつなげることは、考えなかったのです。
それを主張したら、残念なことに、異端扱いされたのです。
恐竜は王様ですから、一人で威張りたかったのでしょう。
しかし、恐竜の時代が突然、終わってしまったのです。
インターネットが急速に普及したためです。
インターネットは軍事用や学術用であると考え、
個人や商業用ではない、
個人用は、パソコン通信であると考えるのも無理はありませんでした。
しかし、転機というものは、いつの時代もあるのです。
Windows3.1では、インターネットの設定が困難であったのですが、
Windows95では、インターネットの設定が簡単になってしまったのです。
さらに前後して、見やすく美しい、インターネット閲覧ソフトが登場しました。
ネットスケープというインターネット閲覧ソフトでしたでしょうか。
これで、インターネットは急速に普及することになりました。
当初は、Windows95で巨大なパソコン通信を構築する予定が、あわてました。
急に方向転換して、インターネット閲覧ソフトを発展させることになりました。
これがインターネットエクスプローラーというものです。
パソコン通信のなごりをかすかに伝えているのが、MSNです。
無料のインターネットエクスプローラーが普及して行くうちに、
有料のネットスケープは、消えつつありました。
しかし、最近では、店頭で再び、OPERAという有料のインターネット閲覧ソフトが、
少しですが、売れてきました。
ネットスケープが姿を変えて、復活するのでしょうか。
このようにインターネット閲覧ソフトの登場により、
巨大なパソコン通信は、消えてしまったのです。
そして、汎用コンピューターである王様の力も消えて、
象徴的な存在となりました。
今では、小さな王様が、インターネットの道案内の役割を果たしています。
王様に従属していた地方豪族が、主役となったのです。
さらに高速大容量通信システムが確立すれば、
つまり、通信速度が100Mbpsのブロードバンド社会ができてしまえば、
ますます、王様は象徴の存在となります。
パソコン同士が、高速大容量通信で結ばれることにより、
パソコン同士が集まって、仮想スーパーコンピューターを作ることができます。
これが、Grid Computingというものです。
従来は、超高速のコンピューターを作る時、
MPUをたくさん並べて、超高速のコンピューターを作ったのです。
Grid Computingというのは、通信回線で大量のパソコンをつなげて、
ひとつの仮想スーパーコンピューターを作るものです。
通信回線を通して、無数のMPUが並列に並ぶことになります。
確かに、そこには、数を数えてみれば、
無数にパソコンが存在しているように見ますが、
コンピューターという性質で、数を数えれば、
数は1つしかありません。
さらに通信速度が100Mbpsのブロードバンドが確立してしまえば、
「サーバーのないネットワーク」も可能となるのです。
もちろん、超高速のMPUが必要となります。
要するに、このようなパソコン優位のネットワークを構築するには、
高速大容量通信システムの確立が必要です。
さらにパソコンのMPUの処理速度をさらに高速化することが必要です。
高速大容量通信システムの確立と、パソコンのMPUの高性能化により、
王様である汎用コンピューターや、その仲間であるスーパーコンピューターは、
やがて消えていく運命にあるかもしれません。
このように、コンピューターの世界では、
中央集権の代表である汎用コンピューターの力は弱まり、
地方自治の代表であるパソコンの力は強くなっているのです。
極論すれば、インターネットの前では、
スーパーコンピューターですら、1つの端末に過ぎないのです。
もしかすると、汎用コンピューターも作ったのも、
パソコンを作ったのも、同じメーカーかもしれません。
そうすると、皮肉な運命であると同時に、
不思議な役割を演じたとも言えるでしょう。
コンピューター業界というものは、みんなが覇権を競っています。
みんなが欲のもとに行動しています。
しかし、なぜか、文明の進歩に役立っているのです。
みんなが役割を与えられて、いつの間にか、その役割を忘れて、
欲のもとに行動しますが、しかし、結局、
振り返ってみれば、シナリオどおりになってしまうのです。
そういう意味で、常に歴史を振り返ることは重要です。
誰もが、「歴史哲学」を持つことが重要なのです。
これからの時代は、科学技術が先で、
政治が遅れてついてくる時代になるかもしれません。
そういうわけで、科学技術のわかる政治家がどうしても必要となるのです。
今までの政治家は、軍事がわかる政治家が必要でした。
しかし、これからの時代は、そういう政治家は、古い政治家となるのです。
科学技術が急速に進むことにより、人々は、かえって、
急速に「心」というものに関心を持ち始めます。
人間の心がわかる政治家、つまり、心の教えが説ける政治家、
要するに、宗教がわかる政治家が必要となるのです。
宗教的な教えを政治理念にする政治家の出現があるのです。
科学技術の政治家、宗教指導の政治家、
そういう時代がくるのです。
さて、昨日の新聞で、IP電話の記事がありました。
IP電話の特徴は、いろいろありますが、
要するに、同じグループに属するIP電話同士の通話は、
通話料が無料と言うことです。
IP電話同士で、通話料がタダということです。
日本は、IP電話の先進国です。